今回は台北ステイのスケルトンツアーを利用した。台北へは12時過ぎに到着。入国審査も順調で、荷物を受け取り外へ出てバスで市内へ。結局チェックインが出来る3時まで免税店へ連れて行かれていた。一楽園大飯店が今回のステイ先なのだが、噂で聞いていたのとは全く違い、明るいロビーと親切なスタッフが出迎えてくれた。案内された部屋も確かに狭いが、浴室のタイルもよく掃除が行き届いているし、ベッドも清潔だ。照明も部屋の割には多くて明るい。これなら快適に過ごせそうだ。
一旦荷物を置いて、フロントで私のかわりに電話を掛けてくれと頼む。すると、若い男の子にマネージャーらしき人が指示してくれた。彼に拙い中国語で事情を書いたメモを見せながら説明したところ、快く電話してくれた。まずは北斗神社の狛犬が現存するのか。一番気になることだ。しかし何度かけてもつながらない。日曜日だからかもとのこと(彼はこの後フロントへ、明日自分は休みなので代わりに掛けてやってくれと頼んでくれていた。大変親切なスタッフだった。多謝!)。まあ仕方ないと、2番目の新営糖廠五分車の運行状況確認。結果、こちらは月曜日も運転していて、ちなみに平日は10時と14時の2本運行されているという。しかし、現在点検中だとかで途中までしかいかないそうだ。半分の距離しか乗れないので、ただですら短いのにそんなの中途半端だ!鉄分不足に陥ってしまう!と、今回は残念だが諦めることにした(ちなみに2ヶ月くらいやっていて、土日祝に限って全線走るそうだ)。最後に日統客運の北斗バス停がある場所だが、バス会社のサイトで調べておいた住所以上のことがわからないようだった。電話を終えた彼は「とてもむずかしいことばかりだ!」と笑いながらメモを渡してくれた。しかし私たちは意気揚揚と、台湾の地で余生を送る狛犬たちをたずねる旅をはじめるのだった。



スタッフのお兄さんに手を振って出発。駅まで歩くが15分ほどで到着。新営へ行かないと決めたので歩きながら明日の予定を組みなおした。とりあえず、員林まで出ることに決め、切符を買いにいく。しかし自強號はことごとく売り切れで、どうにか朝6時過ぎ発の復興號が取れ一安心。ついでにあさっての蘇澳ゆき切符も聞いてみたが、朝の列車が全て売り切れ。もうバスか、鈍行列車で行けばいいやとすっぱり諦めた。そうして、コンビニで新しい時刻表を購入してから電車に乗り、最初の目的地である三坑へ。台湾のハイキングサイトで紅淡山を紹介していたが、その記事の中で寶明寺の門前に据えられている獅子について「獅子はとても変わっていて見たところ中国の南方獅でも北方獅でもないが、日本の狛犬かどうかは知らない」なんて説明していたので気になって仕方なかったのだ(寺よりさらに登ったところにおきつね様が残っており、そちらは写真で紹介されていた)。横座りの座席から見える青空がまぶしい。夕暮れ時の日差しはとてもきつくてまぶしい。窓の外できらきらしていた。向かいの席では、日本と変わらないいまどきの女の子達が、楽しそうにサンダル履きの足をぶらぶらさせながらじゃれあっていた。



三坑の駅に到着した頃には日の光もだいぶんとオレンジ色になっていて、ホームに立つ私たちを容赦なくじりじりと照らしていた。駅の横にある家は小さく質素であったが光のせいで皆明るく、美しく見えた。お経のようなものが風に乗って聞こえてくるぐらいで静かな駅だった。降りる人もまばらで、駅員がのんびりと切符を取り上げていた。改札を出て、地下道を右側に折れてくぐったところが街の始まりだ。とりあえず南栄路のコンビニで肉まんを買って腹ごしらえをする。お腹が落ち着いたところで、三坑にある「富盛_焙材料行」という会社の案内図片手に、八堵方向に南栄路をまっすぐ歩くと20分ほどで明らかに寺の入口っぽい立派な門が見えてきた。そこは「基隆客運の寶明寺バス停前、向かいは基隆市綜合卸売市場」という場所だった。



見つけた喜びもつかの間、門の奥には長い階段が待っていた。それが終わると右手に折れ、今度は坂道だ。寺の門につく頃には髪の毛から汗がたらたら流れていた。最後の階段を登る前に水を一気に飲む。果たして狛犬か否か。おそるおそる山門をくぐり階段を登ると、目の前に現れたのは私からすると獅子・・・に見える疑惑の対象物であった。
一応別の場所にあるかもと周囲を探し回るが、他にそれらしきものはなかった。しかもすぐそばには石造の象もある。しかも、この獅子と象の台座にはそれぞれ同じ言葉が刻まれているのだ。台座と獅子はつながっているため挿げ替えられることはない。ちなみに、この獅子と似た形のものが桃園神社に狛犬として据えられており、またliondogさんがご自身のサイトで海外神社の絵葉書を多数紹介されている、そのうちで台湾のカテゴリー内、「不明」に相当する神社の絵葉書にも同じような獅子が写っていた。
石の質感からして、このふたつはおそらく日本統治時代あたりの同時期に作成されたものだろう。神社に象はぴんと来ないので神社にではなく、日本統治時代のお寺に据えられていた獅子と象なのだろう。お寺なら普賢菩薩さまの乗り物だからね。勝手にそう決めてすっきりする。


寶明寺山門。左側には一般住宅の
勝手口があり、生活感あふれている。

寶明寺の象。何となく居場所が不自然。

寶明寺の獅子。



一気にいろんなことを考えていたら、お坊さん達が素食を外帯状態で両手にぶらさげながら門をあけて出てきた。ビニール袋に入ったおいしそうなしいたけの煮物を見つめながら「基隆神社へ行かねば」と決意も新たに立ち上がる。(今にして思えば、お坊さんに尋ねればよかったのでは・・・)
空がオレンジ色になってきた。急いで大通りへ向かって降りるが、登ってきた階段は雑草やコケがいっぱいでじめじめしていたため、何となく明るい大きな自動車道を歩く。が、階段はショートカット、自動車道は大回りなので思ったより時間がかかる。お寺の周りにある家々から流れてくるダンスミュージック(社交ダンスの)を聞きながら、多少焦りつつ急ぎ足で下を目指した。
そうして南栄路へ出て、すぐにタクシーを拾い、中正公園の忠烈祠へ向かう。車内はクーラーがよくきいていたが、それでも汗がひかないので扇子でばたばたやらかした。しかし、忠烈祠へ行くはずのタクシーは私たちを中正公園のでっかい観音像がある展望台へ連れて行った。私のつたない中国語では通じなかったのか!
慌てて「忠烈祠へ行ってくれ」と頼むが「基隆の中正公園には忠烈祠はない、それは台北の間違いじゃないか」と言われてしまう。それでも地図を見せながら「ここにある!」と抵抗を試みたが、「民俗文物館は確かにあるが、忠烈祠はない、この地図はまちがっている」と困ったように返答された。これは埒があかないので、新楽戯院(忠烈祠の近くにある)はわかるというのでそこで降ろしてもらうことにした。
どんどん日が暮れていく。早くしないと狛犬を写真に収めることができなくなってしまう。日本へ狛犬の姿だけでも連れて帰りたいのに。新楽戯院から信号を渡って右手へ少し行ったところに、立派な門があった。まさにこれこそ忠烈祠やん!



基隆神社石灯籠。

基隆忠烈祠。
門の両脇奥に狛犬が据えられている。
犬を連れて散歩中の人や、じゃんけんでグリコをして遊ぶ母子を尻目に階段を急ぎ足で登る。そうして右手へ進むと立派な石灯籠があった。さらに奥には再び階段があり、その一番上には見覚えのある姿が。ああ、狛犬だ。遠めで見てもよくわかるよ。その瞬間、疲れも忘れて階段を駆け上がった。しかし最後は力尽きてよれよれになりながら狛犬へ向かっていった。友達は笑いながら後からゆっくり登ってきた。
とにかく暗くならないうちにと写真をさまざまな角度から撮る。「嘉義の狛犬を知ってる?あなた達と似てるのよ〜」などとこっそり話し掛けながら毛や歯を数えた。日本のものより一回り大きな蚊と戦いながらの作業だった。しかもデジカメを上手に使えないので、暗い中での撮影はピンぼけの連続だ。狛犬を一通り見終わった後周りを見渡したが、確かに車で入ってくる方法がわからなかった。でも「ない」と言い切るのはどうだろうか。



ここからの景色はなかなか気持ちのよいもので、これなら狛犬たちも清清しい日々を送れるだろうとなんだかほっとした。だいぶんと日が落ちたので、いとまを告げる。階段の下から大きく手を振って狛犬たちにお別れの挨拶をしたら、誰がいるんだろう?と近くにいた人がいぶかしげに忠烈祠を見上げていた。
そのまま駅へ向かうが、自由橋を渡ったところあたりから夜市が始まっていた。大変な人ごみだ。裸電球の明かりがまぶしい。しばらく人に揉まれていたが、疲れたので商店のほうへ移動した。書店があったので、北斗の地図がないかと探したところ、戸外生活シリーズの「中台湾」に載っていた。しかも、員林や田中のバスターミナルの場所や、バスによる各地へのアクセス方法が詳しく紹介されていた。これは明日、きっと役立つだろうと購入。再びぶらついて愛三路へ出たところで夜市とはお別れ。近くに鉄道グッズを飾った感じの良い喫茶店があったが、食事がしたいとのことで残念だが今回は諦めた。



忠一路にかかっている歩道橋に登ると、基隆港が見渡せた。日の光が完全に落ちてしまう直前、さまざまな色が混ざった空の下で船や建物の光がまたたいている。歩道橋の上には私たちのほかにもこの景色を楽しむ人たちがいた。二人組の女の子に写真を頼まれた。私たちも撮ってもらった。
駅までの道には明かりが埋め込んであり、ぽおっと道路が光っているようだ。気持ちが浮かれてくる、楽しい夜景だった。最後にもう一度歩道橋を渡る。ぞろぞろと夜市へ向かう人々と反対方向に階段を降りて行ったが、友達が私の腕を掴んで必死の形相だ。「しらん間にあっちの流れにのってしまいそうで・・・」夜市への情熱が人々からあふれ出ていたのだろうか。
基隆港(駅側)

基隆港(港努局側)
階段の先には駅が見えた。すっかり日の落ちた中、19:27発の電車で台北へ戻る。八堵から学生が大勢乗り込んでくる。楽しそうに話す女の子達、ぐっすり眠るカップル、静かに語らう男の子達・・・皆海で遊んだのだろうか、よく焼けている。窓の外は暗いが、時折大きな道路と交差するところで白い光がちらちらと見えた。夜の電車が磯の香りを乗せてごとごと揺れながら松山へ到着。夜市で買ったのだろう、外帯の包みを提げた人たちが乗り込んできた。美味しい匂いに空腹感が強まる。しかし、行きがけに台北の地下街で見かけた「99元大安売り!」バッグがどうしても欲しくて台北到着後、とりあえずその店へ急ぐ。友達はウエストポーチ、私はショルダーバッグを買う。リュックを背負ってきたのだが、背中が暑くて大変だったのだ。明日から楽になる。
いい買い物が出来て満足した私たちは「しじみの醤油漬け」が食べたいので台湾料理の名店『欣葉(新光三越店)』へ行くが、トイレへ立ち寄って戻ってきたらすでに「準備中」となっていた。しょんぼりしながら西門町へ戻りつつ食事の出来る店を物色する。しかし適当なところが見つからず、無難に深夜営業している『亮星港式飲茶』へ行くことにした。店内はきれいで、日曜日の10時過ぎだというのに小さな子供を連れた客も多かった。禁煙席を選び、窓近くの席に案内された私たちは、メニューを開く前にビールを頼む。台湾ビールの生がすぐ運ばれてきた。乾杯して、一気に飲み干す。冷たいビールが五臓六腑にしみわたる。



亮星港式飲茶にて。私が着ているのはお気に入りの獅子柄Tシャツ。

えびのマヨネーズかけ。なぜかふりかけチョコが。とにかく面白い味だ。

お腹がすいていたので結構な量を頼んでしまう。えび蒸し餃子(ぷりぷりでうまい)、空心菜と大蒜の炒め物(定番だが、どうしてああもしゃくしゃくとしておいしいのだろう!)、海鮮炒麺(私好みの太麺)、野菜や鶏肉がたっぷり入ったスープ(あっさりしていてお口直しに良い)、えび腸粉(ふにふにした皮に包まれたえび。この食感は初めてだ)、えびのマヨネーズかけ、その他に蒸し物一品だ。特に仰々しい揚げ麺の容器に入れられて登場したえびマヨだが、かかっているマヨネーズはココナッツミルクのような味がふくまれており、濃厚でくせになりそうな味だった。日本人の見本のようにえび好きな私達だが、この食事を全て平らげてしまった。最初は外帯する覚悟だったのに。はちきれそうにいっぱいとなったお腹をさすりながら会計を済ます。その際、一人100元のお食事券とコーヒーが1元で飲める券をもらった。これを最終日の朝に使おうと、そのときは思ったのだ。だって24時間営業だもの。



散歩がてら、西門の店をのぞいて歩く。立ち並ぶブティックはかわいらしい服にあふれている。しかもバーゲン中とあって大変安い。友達はあれこれと物色していた。しかし、ほどなく店が閉まりだしたのでホテルへ戻る。次の日が早いので、お風呂に入ってカバンに明日いるものを詰め込んだあと、フロントにモーニングコールを頼んで(日本語で頼める)倒れるようにベッドへ突っ込む。そうしてすぐに意識が眠りの彼方へ飛んでいったのであった・・・